同位成分の選択の表現
同位成分の選択は、該当する成分のどれかひとつが真であることを示す表現です。日本語では「AかB」・「AまたはB」に相当します。
モンゴル語の同位成分の選択は、次のような接続表現を使って表しますが、格のとり方と接続表現の使い方の間でやや複雑な様相を呈しますので、このモジュールではひとつの試みとして以下のように整理しておきます。
以下の説明では、同位成分をA・Bで示します。
モンゴル語の接続表現は、このモジュールで仮に基本形式と呼ぶものと、副詞的形式と呼ぶものとに分けられます。すなわち、基本形式は、現代語でもっぱら接続詞として使われるものを指し、副詞的形式は、「または」・「さもなければ」といった語彙的な意味をある程度保持している形式を指します。
基本形式と副詞的形式は次のとおりです。
基本形式
буюу
юмуу
副詞的形式
эсвэл
аль эсвэл
үгүй бол
нэг бол
基本形式と副詞的形式(【基】・【副】と略記)別の組み合わせパターンは次のとおりです。
以下、基本形式と副詞的形式のうちからそれぞれひとつだけを例として示します。
Aの格はいずれも、「主格またはBと同じ格」になります(これを※で示します)。とくに規範意識が強い場合、副詞的形式のAは必ずBと同じ格になると主張される場合もありますが、一般にはどちらでもよいとする話者が大半です。
パターン①
【A】※ 【基】 【B】さまざまな格
харандаа юмуу үзгээр 鉛筆かペンで
харандаагаар юмуу үзгээр 同
パターン②
【A】※ 【基】, 【副】 【B】さまざまな格
харандаа юмуу, аль эсвэл үзгээр 鉛筆かペンで
харандаагаар юмуу, аль эсвэл үзгээр 同
パターン③
【A】※, 【副】 【B】さまざまな格
харандаа , аль эсвэл үзгээр 鉛筆かペンで
харандаагаар, аль эсвэл үзгээр 同
パターン④
【副】 【A】※, 【副】 【B】さまざまな格
нэг бол харандаа , нэг бол үзгээр 鉛筆かペンで
нэг бол харандаагаар, нэг бол үзгээр 同
ただし、үгүй бол はパターン④では使われません。
これらの接続表現が名詞を修飾する数詞をつなぐ場合は、Bにあたる数詞だけがН交代語幹になります。ここは格語尾とは違う点ですから注意してください。
гурав юмуу дөрвөн хүүхэд 3人か4人の子ども
言い換え表現としての用法
基本形式のうちの буюу には、同位成分の選択ではなく、「AすなわちB」・「AつまりB」という言い換えを表す用法があります。
Би энэ номыг 1.000 йен буюу 10 ам. доллараар авсан. 私はこの本を1,000円すなわち10米ドルで買いました。
(ам. доллар = Америк доллар)
このような言い換え表現は、書きことばと話しことばを問わず、モンゴル語の論理展開では非常に好まれます。