同位成分の累加の表現
同位成分の累加は、「AだけではなくBも」というように、該当する同位成分を数えあげていく表現です。
モンゴル語の同位成分の累加は、さまざまな接続形式を使って表しますが、これには、語幹に直接接続するものと、接続表現が独立しているものとがあります。
以下の説明では、いずれも同位成分をA・Bで示します。
語幹に直接接続するもの
次のような接続形式を語幹に接続することによって、同位成分の累加を表すことができます。
【A 語幹-аар үл барам】, 【B:さまざまな格】
【A 語幹-аар барахгүй】, 【B:さまざまな格】
これらは、日本語の「AだけではなくBも」に相当します。
多くの場合、Bのあとには「Bさえ」という意味を強調する助詞 ч が置かれます。
Хонины ноосоор үл барам, ноолуур ч экспортлож байна. ウールだけではなく、カシミアさえ輸出しています。
Хонины ноосоор барахгүй, ноолуур ч экспортлож байна. 同
否定文の場合も構文上の違いはありませんが、否定の対象としてふつうは考えにくいものをBとする強い否定の表現になります。
Тухайн үед боловсролын тогтолцоогоор барахгүй, жижиг дэлгүүр ч байсангүй. 当時は、教育制度ばかりか小さな商店さえ存在しませんでした。
接続形式が独立しているもの
次のような接続形式ををAのあとに置くことによって、同位成分の累加を表すことができます。
Aの格はいずれも、「主格またはBと同じ格」になります(これを※で示します)が、話者によってゆれが見られる場合も少なくありません。
【A】※ төдийгүй, 【B:さまざまな格】
【A】※ төдий биш, 【B:さまざまな格】
【A】※ байтугай, 【B:さまざまな格】
【A】※ битгий/бүү хэл, 【B:さまざまな格】
最後のふたつの表現はややくだけたスタイルで用いられます。
これらはいずれも、日本語の「AだけではなくBも」・「AどころかBも」・「AはいうまでもなくBも」などに相当します。
多くの場合、зөвхөн 「単に」、мөн 「おまけに」(төдийгүй と共起しやすい)、харин 「一方」(төдий биш と共起しやすい)、түүнчлэн 「そればかりか」といった副詞や、Bのあとに置かれて「Bさえ」という意味を強調する助詞 ч が一緒に使われます。
以下の例では、AがBと同じ格をとった場合で示します。
Зөвхөн их дэлгүүрээс төдийгүй, мөн төв захаас ч олдсонгүй. デパートだけではなく中央市場でさえ手に入りませんでした。
Сүмогийн нэвтрүүлэг зөвхөн Улаанбаатарт төдий биш, харин хөдөө орон нутагт ч гардаг. 大相撲中継は、ウランバートルだけではなく地方でも放送されています。
Казахстан руу Улаанбаатараас байтугай Өлгийгөөс ч нислэгтэй. カザフスタンへは、ウランバートルどころかウルギーからでも航空便があります。
Манай аав архинд битгий хэл, пивонд шууд халчихдаг. うちの父は、モンゴルウォッカどころかビールでもすぐに赤くなってしまいます。
一方、「AもBも」という単純な累加を表す次の表現もあります。この場合は、AはBと同じ格になります。
【A:Bと同じ格】 ч, 【B:さまざまな格】 ч
Багш намайг ч Амрааг ч хамт загинасан. 先生は私もアムラーも一緒に叱りました。